東京・新宿に再現した「島&都市の匂い」レポート ~淡路編~

淡路島では、名産品として知られるお線香の香りを皮切りに、淡路島ならではの匂いを採取しました。その様子を淡路市ナビゲーターの堺野菜穂子がレポートします。

次はいざ、淡路島へ! 島の匂いを訪ねて採取しました。

神戸での匂いハンティングを終えた採取隊は、明石海峡大橋を渡って淡路島へ。
淡路島では、名産品として知られるお線香の香りを皮切りに、淡路島ならではの匂いを採取しました。その様子を淡路市ナビゲーターの堺野菜穂子がレポートします。

大人の工場見学、お線香工場へ

前日の神戸に引き続き、さやかな五月晴れで絶好のハンティング日和となった淡路島。どんな“素”が獲れるのか期待が膨らみます。神戸での採取の様子はこちら→

この日は朝9時に淡路市多賀でお線香を製造販売する「株式会社薫寿堂」に集合し、いざ工場見学へ。

建物の入り口で薫寿堂の製造担当・常務取締役の明石省三さんが出迎えてくれました。まずはご挨拶。
あまり知られていませんが、淡路市は日本国内の線香生産量日本一を誇り、古くは推古天皇の時代に淡路島に香木が流れ着いたと『日本書紀』に記されています。実際に淡路島でお線香の生産が始まったのは明治時代。海運業で栄えていた現在の淡路市江井地区で、季節風で船を出せない冬場の家内工業として定着したのが始まりです。

薫寿堂

いよいよ工場内に。漂うお香の匂いと、大人の工場見学に気分が上がります。この工場では1日に200kg、他の工場も合わせると1日600kg以上のお線香を製造しているそうです。1日に製造するお線香は1種類のみ。この日に製造していたのは「特撰花琳(かりん)」という薫寿堂の代表的なお線香で、誰もがイメージする雅なお香の匂いに包まれます。

薫寿堂

お線香はルームフレグランスとしてのニーズが広がり、様々な香りが商品化されています。
「昨日は神戸で六甲山の匂いと珈琲の匂いを採取してきまして」との山田さんからの報告に明石さんも興味津々。薫寿堂とデュアルのコラボ商品もありえるかも?

映像と音で香りのイメージを採取!

薫寿堂

ここでは匂いの採取はせず、映像と音の採取が目的。粉状の原料にお湯を加え粘土状に練られていく様子を池田カメラマンがじっくり撮影します。800kgもあるドラムが2つ、グルグルと回転しながら原料を練っていく様子は結構な迫力。

薫寿堂

機械から出てくる紫芋のモンブランのようなものは、お線香の原料。こうすることで粘土内の空気を抜いているのだとか。このあと、成形してから数日かけて乾燥し、お線香が完成。ここからは人の手で検品と箱詰めが行われている「板上げ」と呼ばれる工程の取材へ。

薫寿堂

採取隊が見とれてしまったのは、ベテランの手による流れるような検品作業。乾燥の工程でわずかに曲がってしまったお線香を跳ね、大きなヘラでサラサラとお線香を集めていきます。この音にインスピレーションを得た池田カメラマンが音を採取。
匂いの専門家坪内さんも、工場見学をしながらピピッときた様子。淡路市に新たな香りの発信拠点が加わるかもしれませんねー。ウェルカム!

株式会社薫寿堂

大人の工場見学を終え大満足の匂い採取隊。最後は薫寿堂キャラクターのかりんちゃんと集合写真。明石さん、ありがとうございました!

「淡路の竹」の匂いを求めて兵庫県線香協同組合へ

実は今回の淡路市取材は「淡路の竹」というお線香について知ることが目的のひとつ。その鍵を探すべく、匂い採取隊は淡路市郡家にある兵庫県線香協同組合を訪問することに。

薫寿堂

その前に「お線香のまち」江井地区を車でぐるぐる。この、のどかな漁村からお線香が全国に運ばれていったんですねー。

江井から5分ほど車を走らせ兵庫県線香協同組合に到着。迎えてくれたのは事務局長の新開正章さんと淡路市地域おこし協力隊の谷口太郎さん。兵庫県線香協同組合では「香司」という厳しい認定基準で香りの伝統と品質を守っています。香司は線香の伝統を受け継ぐマイスターの称号で、一子相伝などで受け継がれている香りの伝統を継承する取り組みなのだそう。

薫寿堂

匂い採取隊から「淡路の竹」の匂いを坪内さんが再現するプロモーション企画について相談したところ、新開さんからは「それは企業秘密だね」。一同、笑。ここはやはり元町の珈琲と同じ作戦へ。
そして新開さんが出してくれた「淡路の竹」は匂い採取隊の鼻から鼻へ、順番にクンクン。鼻孔に甘さと爽やかさのある香りが広がります。実際に焚いてみるとまた違ったお香らしい匂いに変わり、夏の日差しの中、竹林でやすらぐシーンをイメージして香司が作った香りなのだとか。

お香の効果か緊張がほぐれてきたところで、話は1メートルほどある巨大な鼻の説明に。淡路市で来年開催予定のハーブサミットや香りの施設で展示するといったプロモーション後の鼻の利活用の構想にも話がおよびました。鼻の行方、気になります。

消えた棚田の匂いと、稲との出会い

一行は次のミッション「棚田の匂い」を採取すべく淡路島の西海岸を北上し、石田の棚田を目指します。海岸線からすぐに山になる地形から、このあたりは海の見える棚田として有名な場所。特に水をはったばかりの棚田に夕日が映る景色は絶景です。

現地に到着すると、なんと田んぼに水が、ない。
あとでわかったことですが、淡路島でも地域やお米の品種によって田植えの時期が異なるそうで、石田周辺の田植えは6月に入ってからとのこと。急遽、この近くの農家さんに連絡して、ちょうどこの週末に田植えするために用意していたという、稲の苗床を見せていただくことになりました。

淡路市久野々地区

再び車を走らせ到着したのは淡路市久野々地区。淡路市でも標高が高く、溜め池から順繰りと下へ向かって水を張っていくこの地域で、比較的早い時期に田んぼに水が入ります。

淡路市の田んぼ

急なお願いにもかかわらず、笑顔で迎えてくれた岡尾喜久雄さんの案内で田んぼへ。今日初めての匂いハンティング!いよいよ匂いの採取に立ち会える瞬間が。ドキドキ!

苗床

左側がコシヒカリの苗、右奥がキヌムスメ。岡尾さんから説明を受けながら稲の匂いを嗅いでみる山田さんと坪内さん。今回はコシヒカリで匂いを採取してみることになりました。

おもむろにキャリーバックから取り出した白衣を着用し、手際よく機材をセッティングする静間さん。

丸い金魚鉢のようなガラスの開口部から匂い分子を含む空気を吸引し、チューブを通った空気の匂い分子をフィルターに付着させるしくみ。その分子を分析して、匂いを再構築するのだとか。なるほど。

こっちが風下だ!と場所を移動して採取。匂いの分子は確実に採取しなければなりません。
じっと装置を持って待つこと10分ほど。採取は手際よく行われ、今回のミッションは終了。
ちょっとしたハプニングはありましたが、そのおかげで嬉しいことも。
取材させていただいた岡尾さんの息子さんは東京在住。東京のど真ん中で息子さんに実家の田んぼの匂いを嗅いでもらえることに!淡路島と東京がリアルにつながった瞬間でした。

こうして無事にすべてのミッションを終えた匂い採取隊。早速東京に戻り、嗅覚で地域の魅力を伝える日本初?の企画に向けて準備を進め、6月25日から東京メトロ新宿駅構内で開かれたスメルイベントに臨みました。新宿でイベントに遭遇した人もそうでない人も、ぜひ実際の匂いを体験しに神戸、芦屋、淡路島を訪れてみてくださいね!

 

 

 

この暮らし体験のナビゲーターについて

堺野菜穂子

神奈川県横浜市出身。兵庫県宝塚市を経て、5年前から淡路市在住。
ノマド村のショップ「キクハナ 」店主。暮らしと働くを近くに!をテーマにまずは自分の暮らしを実践中。

詳しいプロフィールはこちら

その他カテゴリーの記事をみる