子供の遊び場作りのプロが伝授する、これからの子育てと暮らし

島&都市デュアルの楽しさや現実を知っていただくための『ザ・島&都市デュアルライフスクール』。今回は10月13日に大阪で開催された「教育移住」のスクールの様子をご紹介します。

島の自然と都会の文化が同時に手に入る暮らしを提案してきた「島&都市デュアル」。その出張型スクール“デュアルライフスクール”の「教育移住」編が、10月13日に大阪で行われました。今回は淡路島と神戸から2名の講師が登壇し、デュアルライフで実現できる新しい暮らしと子育てについて話しました。

子供たちの“今、ここ”の気持ちを大切にする「森のようちえん・まんまる」

気持ち良い秋晴れの中、心地良い屋外会場で行われたデュアルライフスクール。SNSやホームページを見て、たくさんの親子連れが集いました。会場には子供たちが遊べるようにと、asobi基地スペースが用意されていました。淡路島から持って来た松ぼっくりやどんぐり、貝殻などもあって、ここでもデュアル感がいっぱい。子供たちの楽しそうな声で賑わう中で講演は始まりました。

トップバッターは、島&都市デュアル洲本市ナビゲーターであり、また淡路島で「森のようちえん まんまる」を運営する佐藤明希さん(通称あじめさん)です。

あじめさんは、岐阜や長野や香川で長年勤めてきた自然学校の経験を生かし、2015年4月、淡路島で「森のようちえん まんまる」を開園しました。

まんまるでは、“今、ここ”の気持ちを大切に、心や体、五感をフル活用して思い切り遊ぶ場を作り出し、その中で子供たちの“創造力”と“想像力”を育みながら、自分自身で毎日を楽しくする力をつけていくことを目指しています。

中でも参加者たちが大きく頷いていたのが、「“安全”はつまらなくて、“危険”は面白いんです」というお話。これは子供に限らず、大人にも言えることですよね。

まんまるの子供たちは、普通なら“危険だ”と触らせてもらえない刃物も扱いながら、森の中で自分たちの遊びを見つけていきます。「子供たちは与えられた環境の中でしか生きていけない。だからこそ大人が環境を選びながら育てて、大人になった時に環境や人のせいにすることないようにしてあげたい。そうすることで自分で選んだことに責任を持てる大人になれるのではないか」―-そんな思いも込められている、まんまるでの時間。そんな時間によって子供たちは”今、ここ“の大切さ楽しさを感じ、心も身体もありのままに人生を楽しく生きていく力を育んでいくのだということが、とてもよく伝わるあじめさんのお話でした。

淡路島だからできる、“ごきげんな生活”

ところで、当のあじめさんが淡路島にいる最大の理由。それは「ごきげんな生活ができること」だそうです。

大自然の中で生かされているという安心感を持ちつつ、島ならではの美味しい食材を味わう。また島の不便さも前向きに捉え、“ないものは作り出す”という精神も、あじめさんにとって、淡路島でごきげんに生活するために欠かせないことです。

淡路島にある素材全てを享受し生かしながら、あじめさんをはじめ大人たちが“ごきげん”でいる姿は、まんまるの子供たちにとって、“これからの生き方のヒント”となって、いい影響を与えているような気がしました。

大人も子供もみんな平等!一人がひとりとして輝ける社会を作る「asobi基地」

続いての講演は、島&都市デュアル神戸市ナビゲーターであり、保育士起業家の小笠原舞さんです。今年7月に生まれたばかりの息子さんと一緒にご登壇。これが記念すべき親子登壇デビューだそうです。

小笠原さんは大学時代、ボランティアで子供たちと出会ったことがきっかけで、保育士国家資格を取得した後、社会経験を経て保育士現場へと入りました。子供たちが秘めるパワーと創造力に魅了され、「子供たちの力をもっと多くの人に知ってほしい」と思い、2012年にはasobi基地を設立。いまや100人を超えるキャスト(仲間)と様々な地域で既存の枠にとらわれない、“新しい触れ合いの場”を作り続けています。さらに、2013年には合同会社こどもみらい探求社を設立し、子供たちにとってよりよい社会・環境をつくることを仕事にしています。

当日併設されていたasobi基地には、豪華なおもちゃや大掛かりな仕掛けがあるわけではなく、紙皿・紙コップ・毛糸・折り紙・マスキングテープなどが用意されているだけでしたが、それらを自由に使って、思い思いに子供たちが遊んでいました。

「子供たちは、お金をかけて特別なことをしなくても、あるものを生かして遊べるんです。“こんな楽しみ方もあるよ”ということを伝えたくて、実際に見てほしくて、様々な地域で親子が自由に楽しめる場作りをしています。私一人ではなく、共感した保育士や保護者と一緒にあったらいいなと思うものを作っています」。
実は、小笠原さんのasobi基地は、子供たちの発想力や想像力を育む場というだけでありません。自由に遊ぶ子供たちの姿から大人が学んだり、親同士が子育ての苦楽を分かち合いコミュニケーションを取れる貴重な場であり、親も一緒に学び、成長できる場にもなっているのです。

自分の中に「余白」が生まれた、神戸移住

これまで、子供にとって「本当にいい社会や環境づくり」を、様々な企業とコラボレーションしながら実現してきた小笠原さんですが、東京から神戸へと移住してから感じた変化は「自分の中に余白が生まれたこと」だそう。
山と海が近くにある日常や、満員電車のない移動を体感するうちに、神戸のほど良さに気付きました。“ちょうどいい”まちのサイズ、余白のある暮らしぶり。こうしたものにフッと息を抜くことができる心地よさを、感じたのだそうです。

「東京・神戸間の往復生活を1年半続けるうちに、東京へ行くと疲れやすく、風邪を引きやすくなる自分に気付きました」と言う小笠原さん。東京と神戸での暮らしの差は、体調を超えて体質にも変化を及ぼすほどだったそうです。

そんなこともあり神戸に移住し、結婚し、神戸を人生の拠点にすることにした小笠原さんの今後の目標は、自分の暮らすまちを最大限に活用して、子育てを楽しむこと。
これからの小笠原さんの活動と子育ての両方から目が離せない感じです。

私たちが一番伝えたいこと…

本イベントのファシリテーターから島&都市デュアルの4市それぞれの子育て制度についての紹介が終わると、最後の締めくくりは講師からのメッセージ。

あじめさんからはこんな言葉が出て来ました。

「小笠原さんと話していたときに出たことなんですが、わたしたちがこのイベントで一番伝えたいことは、“子供のためだけに移住しないで”ということ。
子供は、親が笑っていることがとても重要で、そうあれる場所なら、どこでもいいんです。親が心から笑っていれば、子供はきっと幸せなんです。だから移住は、“自分自身がどこなら喜べるのか”を基準に決めてください!」

参加者たちからも「大人のわたしたちも五感を大切に日々を過ごしたいと思った」、「自分たちの喜べる移住を真剣に考えようと思った」などの感想が聞かれ、二人からの力強いメッセージがしっかり届いている様子でした。

こうして“デュアルライフスクール”第3弾は終了しましたが、会場となった中庭にはその後も多くの参加者たちが残り、悩みや質問を共有し合い、遅くまで盛り上がっていました。

この暮らし体験のナビゲーターについて

藤本沙紀

お住まいのエリア:洲本市
職業・所属など:紡ぎ屋(ライター/プロデューサー)

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