【こだわりものづくりコース】島&都市デュアル スペシャル体験ツアーレポート 後編

淡路島を中心に、こだわったものづくりをしている方々に出会うスペシャルツアーを開催。2日にわたってアテンドした洲本市暮らしナビゲーターの富田が、その様子を2回に分けてレポートします。

2018年12月1日から一泊二日で開催された【こだわりものづくりコース】島&都市デュアル スペシャル体験ツアー。淡路島でものづくりをしている4組に出会い、仕事や暮らしの上での「こだわり」を聞きながら島をめぐる2日間。内容の濃い初日を終えて、ウェスティンホテル淡路で宿泊。2日目は朝からバスに乗り込み、続くこだわり生産者のもとへ向かいました。

島生まれの養鶏家の仕事と人生

2日目最初の訪問先は北坂養鶏場。代表を務める養鶏家の北坂勝さんが案内して下さいました。北坂さんは淡路島出身。お父さまが始めた養鶏の仕事を継ぎました。養鶏場を訪れるのは参加者のみなさんも初めてで、興味津々の様子。さっそく鶏舎を案内してもらいました。こちらの養鶏場では雛鶏も合わせると15万羽ほどの鶏を飼っているそうです。淡路島の人口が14万人程度ですから、島の人口より多い鶏を飼っていることになります。海の眺望がきれいな傾斜地に、ずらりと建ち並ぶ鶏舎。その1棟の扉を開けて中の様子を見せてもらいました。

北坂養鶏場

その途端、あがったのは「わっ!」というみなさんの歓声。奥行100mもある大きな鶏舎に、1万羽の鶏がずらりと並んでいます。北坂養鶏場では白色の「さくら」という鶏と、茶色の「もみじ」という2種類の鶏を育てています。どちらも純国産の品種です。ちなみに国産の卵の多くは、海外から持ち込んだ品種の鶏を日本で育てて卵を産ませていて、純国産の鶏は全体の4パーセント程度しかいないそうです。

北坂養鶏場

この鶏舎で驚くのは、鶏糞の臭いがほとんどしないこと。高床式と呼ばれる、鶏糞を下に落とすスタイルの鶏舎なのですが、以前は、鶏糞がある程度たまったら、かき出して別の場所で処理をしていました。それを、数年前に、鶏舎の下におがくずのような菌を撒き、その菌に糞を分解させる仕組みを取り入れたのです。菌の働きは絶大で、鶏糞をすぐに分解して臭いもなくしてくれ、鶏糞の量もほとんど増えないといいます。北坂さんもその効果には驚かれたそうです。

北坂養鶏場

次に卵の直売所に案内してもらいました。直売所には平飼いで10羽程度の「もみじ」が育てられていて、お客さんが間近に鶏を見られるようになっています。長年、鶏舎でケージ飼いをするうちに、平飼いにも興味が出てきた北坂さん。使わなくなった倉庫を改装して、平飼いを始めたら、今まで気が付かなかった鶏の習性を知ることができたそうです。

北坂養鶏場の直売所北坂養鶏場の直売所

ここで参加者は平飼いの鶏が産んだ卵の採集をさせてもらいました。スーパーできれいにパッケージされ陳列されているのを見ると、まるで工業製品のように感じてしまう卵。「でも1つひとつ鶏が産んだもので、同じものは世界に1つとしてない。鶏のことを知ると卵にあたたかみを感じます」。そんな話をしながら、北坂さんは一人ひとりの参加者に、採集した卵を丁寧にパッケージしてくれました。

北坂養鶏場の平飼い小屋北坂養鶏場の平飼い小屋

最後に、北坂さんご自身のお話を聞かせてもらいました。小さな頃から養鶏場を継ぐことが当たり前な環境に育ち、お父さまが亡くなったあと、当然のこととして養鶏場を継いだそうですが、養鶏の仕事が好きになれず、「こんな嫌な仕事をしている自分は世界一不幸だ」と思っていたのだとか。そんな北坂さんの考え方が変わってきたのは7~8年前から。自分が嫌だと思っていることや、島では当たり前すぎて普通だと思っていたことに、「すごい」「楽しい」と感激しながら暮らす芸術家や、その頃から増えてきた移住者たちに出会い、「ひょっとして島ってすごいかも。しっかり基盤のある仕事を継げる自分って幸せ者なのかも」と、少しずつ考え方が変わってきたそうです。
やっていることは今も昔とかわらない。でも、色々な価値観に触れ、それにストレスを感じながらも一緒に過ごしていく中で、見えるものが違ってきた。ぐるっと一周見渡した後では同じ視点に立っても見えるものが違うと気付いた北坂さん。「360度視点が変わった」という表現でそれを参加者に伝えてくれました。
生産者としてのこだわりに加えて、その生き方にも感じさせられるものが多い時間でした。

淡路島⇔神戸プチデュアル体験&シェアリングパーティー

淡路島での滞在はここまで。「神戸まですぐ」の距離とデュアルライフの楽しさを感じてもらいつつバスで移動します。神戸では自由時間にして、好きなところでランチを楽しんでもらいました。

そしていよいよツアー最後のコンテンツ。神戸のシェアオフィス「120 WORK PLACE KOBE」でシェアリングパーティーです。他のツアーの参加者とも合流して、それぞれの旅のふりかえりと報告会、美味しいケータリングを囲んでの交流会を開催しました。ケータリングしてくれたのは、神戸の「ごはんやルリカケス」さん。野菜にこだわったスパイシーなケータリングは、こだわりものづくりツアーの最後を飾るのにふさわしい美味しさと演出でした。

神戸でシェアリングパーティ神戸の「ごはんやルリカケス」さんケータリング

交流会では濃い時間を一緒に過ごした参加者さん同士、話が尽きません。2日間の興奮をお互いにしゃべりあううちに新幹線の時間ギリギリになってしまうというハプニングも。
「知らない淡路島の魅力がたくさんあって驚きました」「淡路島にまた来ます」「移住したいです」など嬉しい言葉もたくさん頂きました。

これにてツアー終了。2日間みっちりのアテンドでした。参加者のみなさんには、普通の観光では出会えない人たちや、聞けない話を聞いてもらい、五感で島を感じてもらえたことと思います。僕も、参加者のみなさんがとても熱心だったのでアテンドのしがいがあり、楽しい2日間を過ごさせてもらいました。またみなさんと淡路島で会えることを楽しみにしています。

この暮らし体験のナビゲーターについて

富田祐介

お住まいのエリア:洲本市
職業・所属など:企画者・シマトワークス代表

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