【春の訪れ~芦屋市編~】庭先の梅

島&都市ショートコラム。今回のテーマは「春の訪れ」。芦屋のまちで私に春の訪れを知らせてくれるものはなに?

庭先の梅がくれた「春」

芦屋で暮らす私に春の訪れを知らせてくれるものは何だろう? つらつらと考える私の目に飛び込んできたのは、庭先で満開になっている梅でした。
確かに先日うちを訪れた人が「あら梅が咲いてる。もうすぐ春なんだね」と言っていました。
改めて見ると、かすかに薄いピンク色の花が、青い空をバックに満開に咲いています。その様子は確かにかわいいけど、桜と違ってやっぱり地味です。これでは鈍感な私のセンサーにはあまり響かないはずだわと苦笑いしました。

食いしん坊の私にとって、この小さな梅の木が価値を持つのは、実は春ではなく初夏です。5月の終わりから6月の初めにかけて、たわわに梅の実がなるからです。箒の柄で幹をコンコンと軽く叩くとぼとぼとと小さな実が落ちてきます。それを拾い集めて、毎年、梅ジュースと梅酒を作ります。かつてお姑さんが生きていた時にはそれは彼女の仕事でした。彼女が亡くなって数年間は、そんなことを自分の仕事と考えたこともなくほったらかしにしていましたが、「人生フルーツ」というドキュメンタリー映画を観てから心を入れ替えて自分で「梅仕事」をするようになりました。

映画「人生フルーツ」の中で、主役の津端英子さんはこんなことを言っています。「何でもやってみるもんだとお父さんが言うんです。やってみれば分かる。やらないと分からないって」。私はこの言葉にひどく心を打たれました。そして庭の梅の実をほったらかしにして、コンビニで梅ジュースを買うような発見と進歩のない暮らしをやめようと思いました。そしてその年から、庭の梅でせっせと梅ジュースと梅酒を作るようになったのです。
そうしてできた梅ジュースや梅酒は毎年違う風味に仕上がって、いろいろなことを私に教えてくれます。そしてお裾分けを楽しみにしてくれる友人やご近所さんもできました。
そういう意味では、庭先の梅は、確かに、私の暮らしに温かな春をもたらしてくれたといえるかもしれません。

この暮らし体験のナビゲーターについて

渡辺直子

お住まいのエリア:芦屋市
職業・所属など:プランナー&編集ライター

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