淡路の森で宝物探し!<前編>森のようちえん・まんまる 親子体験ツアーレポート

心・体・五感をフルに活用して思いっきり遊ぶ! 淡路島の「森のようちえん・まんまる」の親子体験ツアーの様子を、前後編2回に分けて洲本市暮らしナビゲーターのウエダシホがレポートします!

2019年3月21日、春分の日。この祝日には、「自然をたたえ、生物をいつくしむ」という趣旨が法律に記されているそうです。なんだか淡路島の森で遊ぶ体験ツアーにぴったりな日じゃないですか? 空には厚い雲が立ち込めていたので、長靴とレインウエアを着てレポートに向かいました。

「朝の会」で自分のやりたいことを発表!

午前10時前、森に到着した頃にはもう子どもたちが思い思いに遊んでいました。森のようちえん・まんまるでは、“朝の会”で今日やりたいことを発表するそうです。「やりたくないこと」があればそれも尊重されます。一人ひとりが自分の思いを仲間に伝え、共有するところから1日が始まるんですね。

今回のツアーは、まんまるに通年で通っている満3歳~6歳の淡路島キッズが12名、まんまる卒園児がスペシャルゲストとして2名、親子参加の保護者と一緒に来た2歳児さん(まんまるの保育対象年齢は満3歳~7歳ですが、保育対象年齢の子の親子参加についてくるときのみ参加可)、1人も参加。保育スタッフに佐藤明希さんとOBの保護者。総勢24名のにぎやかな面々で遊ぶことになりました。

ナビゲーターの佐藤明希さんは、まんまるの保育士で、「あじめちゃん」という呼び名で親しまれています。「竹ざおにかかって洗濯物になってみよう~」「笑うと負けよ、アップップダンス〜」と、子どもたちと一緒に新しい遊びを次々と繰り出している、おもしろ&頼もしい女性です!

あじめちゃんが主宰する「森のようちえん・まんまる」は、淡路島の真ん中あたりの森の中に2万坪の敷地をもつ「淡路島マンモス(淡路市)」を拠点に、通年型の野外保育を行っています。自然そのものに触れることはもちろん、木々で足場を組んだテラスやハンモックなどの遊具もあり、「森のようちえん」とはこのことといった感じです。

実は「森のようちえん」という言葉は、まんまる固有のものではなく、1950年代にスウェーデンやデンマーク、ドイツで生まれた野外保育の活動名なのだそう。「森などの自然豊かな場所で、年間を通して、子どもを保育する活動とその団体名」と定義されていて、日本でも個性豊かな団体が、全国で活動を展開しており、年に1度「森のようちえん全国ネットワーク」の全国交流フォーラムも開かれています。

そんな「森のようちえん」の一つであるまんまるでは、自然のままの姿を色濃く残す淡路島を舞台に、森のようちえんだからこそできることを探り、日々子どもたちと向き合っています。

『心、体、五感をフル活用』
『自分の「今・ここ」の気持ちを大切にする』

あじめちゃんとお話ししていて出てきたのがこのキーワード。
このキーワードを、まんまるの保育の中でいかに大切にしているかがわかるシーンを、この日の5時間の体験ツアーの中で、私は何度も見かけることになりました。

淡路島の森で見つけた宝物って、な〜に?

駆け寄ってきた二人が「見つけたで、黒曜石!」と小さな石を見せてくれました。この石が本当に黒曜石かどうかはわかりませんが、○○かもしれないと予測する選択肢や情報をたくさんもっているというのも、日々森で遊んでいるからこそだなぁと思います。一見何でもない石コロも、自分で発見したらスペシャルな石になりますよね。それに私は黒曜石なんて知りませんでした。日々この森の中で遊び学んでいる彼らのほうが、自然に関する知識はう〜んと豊富なのだと思います。

「こっちもあるよ〜」と見せてくれたのはちっちゃなしゃくとり虫。切り株のとっても小さな穴から出てきたそうです。全長2ミリ、写真ではとらえきれないほどの小さなしゃくとり虫も、地面に近い彼らの目線だからこそ見つけられたのでしょう。

そしてこちらの二人は、何やら黙々と作業をしていました。

「水道が水漏れしてます! 直さなきゃいけません!」
曲がった枝をレンチに見立てて、配管(小さな切り株)を直すしぐさは本格的。
もう一人はというと、「はいどうぞ〜、ここは卵焼きセンターです〜」。
葉っぱの卵焼きに土の塩コショウで味付けをして、手のひらいっぱいにサーブしてくれました。

こちらも思わず「ご苦労さまです、ありがとうございます〜」と応えてしまいます。それぞれが、日常の中で心に残ったワンシーンを再現していたのでしょうね。どうやら森の中には、子どもたちの想像力と創造力をくすぐるタネが無限にあるようです。

どうやったらできるかな? を考える

この写真は、「ここ(ボールの上)に乗りたいねん。でも乗られへん」。と言っていたので「なんで乗られへんのかな?」とインタビューした時の仕草です。

「あんな、ここからこんだけ(の高さが)あるからできへんねん」。

他の子ができることでも、自分にはまだできない。それを彼はちゃんと分かっているのですね。ぴょんとボールに飛び乗りビュ〜っと滑走するお兄ちゃんの姿に、いつかできるようになった時の自分を重ねて、憧れを膨らませているようでした。

まんまるで大人が心掛けていることの一つに、子ども自身が登れない場所やできないことを大人がやってあげないということがあります。例えば大人が男の子をこのボールに乗せてあげることはしません。なぜなら絶対一人で降りられなくなるから。そして、自分にはできないと理解することで「どうすればできるようになるか」を考えるようになるから。

黄色の帽子の彼は、今日初めてこの木に登ることができたのだそう。「あじめちゃん見て〜! ここ、登れる!!」これまで何度も挑戦して来たことがわかるような喜び方でした。それを聞いて、他の子たちが「え〜!どうやったん?」と集まります。

あじめちゃんはこう話しかけます。「それは○○(登れた子の名前)のやり方やからな〜。□□(登り方を聞いた子の名前)ならどうする?」

そこからは真剣モード。登れた子の様子を観察し、履いていた長靴を脱いで枝にひっかけ足場を固める工夫をしたりと何度もチャレンジしていました。

途中、できなくて少し泣いたけど、「で〜きた〜〜!」とこの笑顔。やっぱり自分でつかんだ成功って気持ちいいよね!

あの子のやり方、自分のやり方。今できるやり方で、できるようにがんばること。横並びじゃなくていいんだよと、子どもたちのチャレンジから教えてもらいました。

まんまるでは、小さな子が触っていると心配になって取り上げたくなるノコギリも、そばで、挑戦を見守ります。「やってみたい」の思いを尊重して、子どもの挑戦にはとことん付き合いながら、工夫する力、考える力を引き出しているように感じました。もしかしたら、その過程で、あきらめるという決断力や、誰かに助けてもらうというコミュニケーション力なども大きく膨らんでいるのかもしれません。

どう感じたのかを、ちゃんと伝える

森のようちえん まんまるには、年上の子、年下の子、自分とは違う個性豊かな子達が集まります。今日のように、はじめましての子がいる日もあります。

ケンカになることも、もちろんあります。何かの拍子に、悔しさや悲しさを感じて、思わず手が出ることも。

そんな時、大人が「どっちが悪いの!?」とは詰めよらないそう。叩いたという行為自体はよくないと伝え、叩かれたほうの痛みと叩きたいくらい強い思いが存在したことの両方を共有します。あじめちゃんは「手がしゃべったんだよね。でもそれではちゃんと伝わらないよ。感じたこと、言いたいことは口で言おう」と話しかけていました。

まんまるが大切にしている「自分の今・ここ」の気持ち。それをわかるように伝える。そして自分と同じくらいに大切な仲間の気持ちを聞き、お互いが認める気持ちになるようにと後押ししているようでした。

あじめちゃんは、「子どもたちのケンカは、白黒つかないこともいっぱいあるんです。その気まずい空気も含めてちゃんと感じている。でも何かのきっかけでケロっと切り替えて笑顔いっぱいに遊びはじめたり。その点は、私のほうが気持ちの切り替えができていないかも」。と笑って教えてくれました。

自然のまんまの淡路島の森を、まるごと感じる

このツアー前日は「明日は中止になるんじゃ?」というほどの風雨でしたが、まんまるでは多少の雨でも決行します。ポカポカ陽気の日向ぼっこはもちろん気持ちがいいものですが、葉っぱから落ちる雨の雫も、風がヒュ〜っと吹き抜ける音も、雨上がりにうごめく虫たちも自然を心・体・五感で感じる大事な一場面。

そしてこの遊び場は、地面から飛び出ている木の根も、ある程度そのままにしています。どの子も通いはじめはつまずいて何度も転ぶそう。でも、みんなだんだんと転ばなくなってきたり、転び方が上手になったりするそうです。何度も転んだり、枝などを避けながら走ったりしていると、きっと無意識に危険を予知して対応できるようになっていくのですね。

障害物は、硬いコンクリートの上や交通量の多い通りでは絶対に放っておけないですよね。でもここは包容力たっぷりの森のフィールド。転んでもふかふかの土が抱きとめてくれますし、泣いてもゆらゆら揺れる木立がス〜ッと包み込んでくれます。

なるべく自然のままにしているのにはこんな理由もあります。登ることを計算された遊具とは違うグニャッと曲がった木の幹は、登ろうと頑張ることで筋力がつくのはもちろん、バランス感覚も養われていくのだそう。そうすることで、耳の中にある三半規管が育ち、やがて人の話をよく聞くことができるようになる。木登りと耳の良さという一見関係ないことが、成長の過程でつながるのですね。どうやら森の中で過ごすと、いろんな瞬間が子どもたちの豊かな成長を促す手助けをしてくれるようです。

ちなみに、木の幹から降りて力こぶを見せながら彼が放った一言はこれでした。「ねえ、筋肉触ってみて!」うん、確かに腕の筋肉がしっかりしてる!

こんな風に、まだまだ子どもたちとの楽しくエネルギッシュな時間は続きます。次はいよいよみんなで作って一緒に食べるお昼ごはん!

ここからは後編でご覧いただきましょう。では後編へ、どうぞ。

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森のようちえん・まんまる
http://awaji-manmaru.com

淡路島マンモス
https://awajimammoth.com

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この暮らし体験のナビゲーターについて

ウエダシホ

お住まいのエリア:洲本市
職業、所属など:デザイン&コピー

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