島&都市デュアルで教育移住を考えるVol.7
「淡路市・前編」目こぼしなく、地域のみんなで子どもを育てる

「都市の文化」と「自然」が共存するエリア、神戸市、芦屋市、淡路市、洲本市の各市に、ネットではなかなか調べても出てこない各地域の教育情報を聞いてきました。

淡路島の中でも、いちばん本州に近いところにある淡路市。都会と地方のいいところ取りをするのに絶好の立地であり、神戸や大阪に通勤する親が多い地域でもあります。そんなまちでは、いったいどんな子育てや教育支援が行われているのでしょうか? 

淡路市は淡路島のなかでも一番北側にあり、神戸側から明石海峡大橋を渡ってすぐのところに位置します。高速バスに乗れば一時間かからずに三宮にも出られるので、まさにデュアルライフなまちといえるでしょう。そんな淡路市には、どんな特徴ある子育て支援があるのでしょう?淡路市の担当者にインタビューしてきました。

*この記事に掲載されている内容はすべて2018年8月1日時点のものです
*この記事では市で行われている特徴的な子育て施策についてのみ言及しており、その全てではありません

淡路市の未就学児への取り組み
「目こぼしなく、地域のみんなで子どもを育てる」

時友(以下、時) まずは、未就学児への淡路市ならではの取り組みについて教えてください。

淡路市担当(以下、淡) 淡路市では「赤ちゃん未来の宝物助成金」という出産祝い金があり、多子世帯を応援する取り組みを平成29年度から実施しています。2人目を出産には5万円、3人目は10万円、4人目は50万円、5人目は100万円(双子などの多児出産の場合は上記の額に10万円加算)を支給するというものです。

 新聞で読みました! 5人目を出産した方、いらっしゃいましたよね。

 はい。制度が始まってもう2名、5人目の100万円助成者に該当されています。

 私は今年から保育園に息子を入れているのですが、周りを見ていると3人目とか4人目のお子さんが産まれているケースをよく見かけます。この助成金も功を奏しているかもしれませんね。それと何より素晴らしいと思うのは、淡路市でもお産ができるようになったことです。

 そうなんです。以前は洲本市か橋を渡って神戸側に行っていただかないと出産できなかったのですが、市が聖隷淡路病院を誘致し、産婦人科外来を開設しました。平成26年4月、聖隷淡路病院は夢舞台に移転し、新しい施設で診療を行うこととなり、淡路市内で妊娠から出産までを整備できる体制ができました。ここは救急外来もありますし、里帰り出産もできるようになり、すでに出産人数は400人を超えました。また今、淡路市は移住される方がとても増えている現状です。淡路市の東浦地域に至っては、全国で子どもが減っていく流れのなか、島外からはもちろん、島内からの移住も多く子どもが増えているという有難い方向に向かっています。

 それは嬉しい話ですね。

 はい。他の市でも同様だと思うのですが、淡路市でも妊娠期から切れ目のない子育て支援をしようと、4年前からさまざまな取り組みを始めています。まずは淡路市子育て世代包括支援センター(愛称:「おむすび」)を開設し、安心して出産・子育てできるようにし、淡路市健康増進課と(特非)淡路島ファミリーサポートセンターまあるくとタッグを組んで、妊娠・出産・子育てのサポートをしています。

 子育て相談が人気だと聞いています。

 はい。淡路市の中心街にあるイオンの3階に、お買い物ついでに気軽に入れるように場所を設けて、子育て支援員を4人配置しています。予約なしで訪問可能ですし、電話でも簡単な相談は受け付けていて、リピーターも多い現状です。月に1度「元気っ子カフェ」という産前・産後サポート事業を市の保健師やボランティアの助産師と一緒に実施していて、妊婦さんと概ね1歳までの子どもと保護者を対象とした相談と交流の場も設けています。

 乳幼児体重計が置いてあって、授乳がちゃんとできているか心配で、買い物ついでに使わせていただいた記憶があります。入りやすい雰囲気でした。最近リニューアルされたのですよね?

 はい。この9月にリニューアルしたばかりです。都市に比べたら確かに淡路市は人口が少ない地域だと思うのですが、だからこそきめ細かい対応をしていますし、目こぼしがないという自負はあります。

 子育て世代包括支援センター(愛称:「おむすび」)も対応が丁寧で手厚いという話を、私も聞いたことがあります。

 そして、淡路市は何と言っても“待機児童ゼロ”なんですよね?

 そうです。全員が希望通りのところに入れているわけではありませんが、どこかには必ず入れる状態です。

 働くお母さんも多いですものね。

 そうですね。でも、認定こども園が5つあるのですが、認定こども園なら、お母さんが働いていなくても入れます。

 大きくて綺麗な認定こども園を増やしていますよね。

 保育所などを統合していく流れのなかにあるのですが、次世代を担う子どもたちのために保育内容の質的充実を図り、環境の整備を行っています。

 他に力をいれていることはありますか?

 「あそぼう事業」ですね。まず、「えいごであそぼう」と題して、ネイティブの先生を園に派遣しています。もう一つ、「きたえてあそぼう」では、外部から専門の講師を招き、鉄棒や跳び箱など様々な運動に挑戦する機会をつくっています。

 先ほども出ましたが、人が少ないからこその生活のしやすさ、子育てのしやすさというのは私も移住してきて強く感じています。

 あれ、うちの子どこ行った? となっても、「〇〇ちゃん、あそこで〇〇してたよー」とすぐ情報が入ってきますからね(笑)。自然に囲まれていて、誘惑が少ない、ぐれるような場所がないというのは子育てにはメリットですよね。あとは「祭り」の文化が根付いているのも大きな要因だと思います。

 確かに! お祭り、本当に多いですよね。しかも毎回大人も本気。

 祭りのときに、町内会で大人も子どももお互いを認知するんですよね。だから自然と日常でも触れ合いが生まれますし、お互いどこの誰だと分かって意識するので、情報も増える。でも、祭りが子育てに良いのはそれだけじゃないんです。

 え、他になにかメリットが?

 祭りの中で、漁師だったり農家だったり、気質の違う大人同士が混ざり合う姿を子どもに見せられるのが、一番良いところだと思っています。祭りではしゃいだり興奮したりしている大人もいて、その騒ぎ方も地区で違ったりして、親たちが「あいつら、ほんっとうに、どうしょうもない!」とか言い合いながらも、結局最後はお互いを受け入れあっている姿を間近に見て子どもが育つんです。学校の先生と生徒であっても、祭りではいつもとは違う一面をお互い見られるので、そういうところも普段の関係性に影響していると思います。

 それは最高ですね。教えたくても教えるのが難しい部分ですよね。私の育ったところはお祭りがなかったので、私自身も今、たくさんのお祭りに出会えると楽しいですし、町内会が違ううちの子を優しく混ぜてくれたり、はっぴを貸してくれたりして、いつも感謝しています。

 周りを見ていると、親との距離感も健全な気がしますが、こういう人の交流の風土が影響しているのかもしれません。

 「餅まき」もこっちに来て初めて体験しました。「船下し(ふなおろし)」というのでしょうか、いわゆる進水式ですよね。お餅やらお菓子やらお金やらが船から投げられて、老若男女問わず大はしゃぎでジャンプして取りまくるという。さっきまで静かにしてたおばあちゃんたちも、餅まきが始まったとたんすごい勢いで人を押しのけてジャンプして取っていてびっくりしました(笑)。

地元のお餅やさんの紅白餅などが投げられる。

 新築の家が建ったときなどもありますよね。どこからともなく聞きつけて集まってくる。そこに住む大人たちにはなんてことない風景なんですけれど、こういう日常が子どもの情操教育につながっていたり、子どもの地域で育てることが当たり前になっている要因だと思います。

 

淡路市の教育情報 後編に続く

この暮らし体験のナビゲーターについて

デュアルライフ研究所 時友真理子

自然と文化のいいとこどりできる、これからの新しい暮らし方、「デュアルライフ」について研究します。

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