島&都市デュアルで教育移住を考えるVol.8
「淡路市・後編」自然×ICT。タブレットから顔を上げればすぐそこに自然がある

「都市の文化」と「自然」が共存するエリア、神戸市、芦屋市、淡路市、洲本市の各市に、ネットではなかなか調べても出てこない各地域の教育情報を聞いてきました。

淡路島の中でも、いちばん本州に近いところにある淡路市。都会と地方のいいところ取りをするのに絶好の立地であり、神戸や大阪に通勤する親が多い地域でもあります。そんなまちでは、いったいどんな子育てや教育支援が行われているのでしょうか? デュアル最前線なまちの教育について尋ねてみましょう。

淡路市は淡路島のなかでも一番北側にあり、神戸側から明石海峡大橋を渡ってすぐのところに位置します。高速バスに乗れば一時間かからずに三宮にも出られるので、まさにデュアルライフなまちといえるでしょう。そんな淡路市には、どんな特徴ある子育て支援があるのでしょう?淡路市の担当者にインタビューしてきました。幼児までの子育て支援についての前編に引き続き、小学生以降の支援に関する後編をお届します。
*この記事に掲載されている内容はすべて2018年8月1日時点のものです
*この記事では市で行われている特徴的な子育て施策についてのみ言及しており、その全てではありません

淡路市の小学校~高校への取り組み
「自然×ICT。タブレットから顔を上げればすぐそこに自然がある」

時友(以下、時) 続いて、小学生以上の子どもへの教育では、どんなところに力を入れているのか教えてください。

淡路市(以下、淡)タブレットPCを活用した学習やICT機器を用いた授業づくりですね。平成24年からやっているので、他市よりも比較的早くスタートしています。現在のようにタブレット機器が広く教育に導入される以前からiPadを導入し、当時から先導的取組として全国的に注目されました。

 実践事例の講演依頼が来たり、教育誌等でも特集を組まれたりしているんですよね。小学校では何年生から導入しているんですか?

 小学校4年生から中学校3年生まで、一人に1台iPadを貸与しています。ここまでやっている自治体は現在時点では全国でも少数です。教育にタブレット端末を導入するということは、単に数を揃えて渡せばいいというものでは決してありません。教員の授業づくりに対する意識改革や研修、情報モラル等、たくさんの課題があります。このプロジェクトを始めて7年目なのですが、ようやく機器整備が終わったというところでしょうか。

 そもそもどうして始めたのですか?

 先進的なことをしたかったというわけではなく、まずは授業を変えていこう、子ども達が未来に必要となる学習スキルを育成しようというところからスタートしました。その手段としてタブレット活用教育をスタートしたというのが正確だと思います。世界に目を向けるような教育を進める中で、淡路島に住みながら、世界を相手に働くことも可能になる時代が来る、そういうことも実感してほしいという思いもあります。

 

 それは素敵ですね。でも、7年前にスタートした時には、ネットやゲームへの抵抗は、今よりもっと先生たちの中にも大きかったのではないですか? 親としても、ネットやゲームをどう子どもに与えていこうか悩むところだろうし。実際、どうでしたか?

 私たちも最初はそのあたりに対する危惧はありました。でも、子どもにとって、「どのようにICTと出会うか」が重要なのではないでしょうか。デジタルの世界にただ浸るのではなく、教室では子どもたちは自らどんどんデジタルとアナログを組み合わせた、面白くて賢い使い方やアイデアを出してきます。先生方の中には、逆に子どもたちに教わることのほうが多いと言う感想を持たれた方もいらっしゃいます。この事業を通じて気付いたのは、「デジタルの世界が進めば進むほど、自然やリアルと触れ合うことがより重要になる」ということです。タブレットから顔を上げれば、すぐそこに海や山など豊かな自然がたくさんある。それが淡路市の強みであり、より自然の素晴らしさを感じられるところだと感じています。

 淡路市の自然環境の豊かさが生かされているのですね。

 先生の企画以外にも、外部から講師を呼んでワークショップなどもやっています。最近やったのはドローンのプログラミングでした。

淡路市ICT教育

アイデアと表現が広がる

プログラミングで命を吹き込む

主体性を伸ばす協働学習

世界とつながる教室

 プログラミングしてドローンを飛ばして仮説を立てて検証、音楽や動画の編集、英語の発音のチェック、自分の走るフォームをチェック…。自分の小学生時代を思い出すとちょっと考えられないことですね。

 例えば、修学旅行に行けば、デジタル写真等でまとめのプレゼンテーションを作ったりします。その様子を見ていても、自分で課題を見つけて、それを相談したり、教えあったり、見せ合ったり、一緒に作ったりと協働作業を行う場面に活用されることが増えました。あと、全タブレットに中学校3年生までのドリル教材がインストールしてあるので、目標に応じて好きな時に好きな個所の学習を進めるという個別学習を進めることも可能です。学習履歴も指導履歴も残るので、苦手なところを克服したり、得意なところはもっと先に進んだりとマイペースに勉強できます。

 閲覧制限はかけているんですか? そのあたりも気になりますよね。

 情報モラルの教育は各学校共に道徳や特別活動等を通じて取り組んでいます。兵庫県警が行うサイバーセキュリティ対策講習や、スマホ事業者を招いてのネットモラル講座を開催している例もあります。学校の意識も高く、各校とも情報モラル教育には熱心に取り組んでいます。子どもたちは、家で大人たちがどんな使い方をしているかよく見ているので、大人たちが身をもって正しい使い方を見せてあげることが実は最も大事なことだと考えています。

 それはそうですね。よく肝に銘じておきます。タブレット教育以外でも注力ポイントはありますか?

 小中一貫教育に向けて、小学校と中学校の連携に力を入れています。まずは、小中学校の先生が9年間で育成したい子ども達の姿を共有するなど、つながりを大切にしています。従来の小学校と中学校は意外と行き来がないものでした。先生も忙しいですしね。でも淡路市では、お互いの顔がよく見えるように、その壁を取り払う取り組みを始めています。あとは、防災教育ですね。阪神・淡路大震災の経験を踏まえて、炊き出し、高台への避難訓練など各校が工夫して実施しています。漁業体験や農業体験を取り入れている学校もあります。

 濃厚でリアルな体験があって、さらにICT教育があるなんて、まさにデュアル。私の息子も淡路市でどう育つのか、すごく楽しみです。最後に、淡路市に移住を検討されている方に一言お願いします!

 「子育て応援課」からメッセージを申し上げます!「いつかきっと帰りたくなる街づくり」をテーマに、総合的な子育て支援はもちろん、多子世帯の応援にも力を注いでいます!」

 「学校教育課」からです。「淡路市では自分で課題を見つけ、主体的かつ協働的に解決する、『未来を生き抜く力』を育む教育を推進しています。タブレットを導入し、先進的な教育を導入していますが、顔を上げれば海、山に囲まれた豊かな自然もあります。ぜひそんな環境で子ども達の未来の姿を創造しに来てください!」

淡路市の教育情報 前編はこちら

この暮らし体験のナビゲーターについて

デュアルライフ研究所 時友真理子

自然と文化のいいとこどりできる、これからの新しい暮らし方、「デュアルライフ」について研究します。

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