淡路の森で宝物探し!<後編>森のようちえん・まんまる 親子体験ツアーレポート

前編に引き続き、今この瞬間の気持ちを大切にする野外保育「森のようちえん・まんまる」の親子体験ツアーの様子を、洲本市暮らしナビゲーターのウエダシホがレポートします!

2019年3月21日、春分の日に開催された淡路島の野外保育「森のようちえん・まんまる」の親子体験ツアー。後編のレポートは、お楽しみのお昼ごはんの時間から始めましょう!

子どもシェフ特製、まんまるお昼ごはんをいただきます!

まんまるの目標は、子どもたちが道具と火を使いこなすこと。大人と並んで火を起こす背中は堂々としたものです。火が大切なことと同時に危ないということも、体験しながら身につけていくんですね。

通常はお弁当持参のまんまるですが、この日は冬の間月1回行っている「お味噌汁の日」で、直火の釜炊きごはんと淡路島野菜たっぷりのお味噌汁を、みんなでいただきます。「おたまを底の方から混ぜると煮えてないところも温まる」なんてことも実践して覚えます。
そしてなんと、使うのは去年の2月にまんまるの子どもたちが仕込んだ手作り味噌。その「まんまる手前味噌」を、子どもたち自ら「私がやる〜!」と溶いていきます。まんまるでは日頃から保存食づくりなどの昔ながらの生活の知恵も経験しているそうです。

自分のごはんは自分でもらいに行って、準備万端。「みんな用意できたかな〜?」「もう食べてもいい〜?」と声をかけあいます。一斉に声を上げる「いただきま〜す!」が森に響きわたり、初めましての子たちもOBのお兄ちゃんお姉ちゃんも、大人も一緒になって、お昼ごはんスタート!

お釜で炊いた今日のごはんはおコゲたっぷり硬めの仕上がり。噛みしめるほどお米の甘さが広がります。まんまる製のお味噌が染み込んだお汁もおかわり続出。あっという間に完食でした!

同じ場所で何度も遊ぶことで、わかること

まんまるは、同じ森の中で一年を過ごす「定点型」の運営です。同じ場所で月日を過ごす理由の一つに、四季の移り変わりを肌で感じられることがあげられます。

春にタケノコを見つけた経験がある子は、翌年の春のはじまりに「もうタケノコあるかなぁ〜!」と気づくようになるそう。反対に、意気揚々と探しに出かけても、時期が早ければ見つけられないことも知っていきます。刻々と表情を変える自然の面白さ、待たなければならない不自由さといった「体感しなければわからないこと」は、1年を通して同じ場所で遊んでいるからこそ感じることができるのです。

今回、神戸市から参加した親子は、まんまる体験は2回め。前回は雨の中の森をお散歩して楽しんだので、また参加したくなったのだそう。
「島に通って通年参加するのは難しいけど、何度もこの場所に連れて来て、一年を通して毎回違う自然に触れてほしいと思っているんです」と話してくださいました。

そして同じ場所で過ごすことのもう一つの利点は、自分の成長を感じられること。同じ木を前より簡単に登れるようになる。同じ道具を前よりうまく扱えるようになる。そんな自分の進歩に、自信がどんどんついていくのだそうです。

まんまるは、2019年4月2日の入園式に、5期生の子どもたちを迎えることになります。この写真の二人は一期生のOBさん。ノコギリの扱いも大人顔負けで、参加していた子どもたちにとって、何でも上手にできる憧れの存在のようでした。か つて通ったこの場所に来て、二人はどのように感じていたのかな。

絶対ダメな時は、厳しく伝える

自分のやりたいことを考えて、見つけて、やりたいだけやる。こうした自主性を「好き勝手してもいいんだ」と勘違いしないように、絶対にダメな時は厳しく伝えます。

たとえばこの日、駆け回って遊ぶ中、勢いで保育者の目の届かない1段下の場所へ行ってしまった子を、「見えないところに行かないで!」と注意をして連れ戻すという、空気がピリっとする瞬間もありました。

・保育者の見えないところには行かない
遊び場を移動したいとき、探検にいきたいときなどは、保育者に相談する
・毛虫、ヘビ、ハチには、さわらない
・座って昼食を食べる
・夏でも長袖、長ズボンを着て、体を守る etc
まんまるのルールをなぜ守らなくてはいけないかを、子どもたちは理解する努力をし、保育者たちは、なぜ守ってほしいかを何度でも伝えます。
もし誰かが守らなかったら、保育者はもとより子ども同士でも、それがいけないことだと伝え合います。その環境下で、互いに認め、信じて、思いっきり遊ぶ。そうすることで、保育者と子どもたちの信頼関係が築かれているのかのしれないなと感じました。

子どもたちは、大人の師匠

私は、今回の親子体験ツアーの募集要項にあったこの言葉、「周囲の大人の在り方、場の作り方」がどんなことを指すのかをはっきり分からなくて、どのようにレポートしたらいいのかなと正直戸惑っていました。

そのモヤモヤをひとまず解消するヒントとなったのがこちら。
あじめさんが参加者の保護者の方に野外保育の前にお渡ししている用紙に、こう書かれていたのです(抜粋)

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周囲の大人のあり方が、まんまるの空間に、とても影響します。
私が心がけている大きな4つ
●子どもを信じる
……子どもには、かなわない
●実存的観察者
……目の前の遊びにしっかり存在しながら、
常に観察者の目(安全管理、人数確認)を忘れない
●i-メッセージで伝える
……主語は私。例えば注意するときに「人の迷惑になるから」ではなく、
「私が怖いから、この枝を振り回すのはもっと広いところでやってほしい」
と伝える
●ごきげんでいる
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ツアーが始まってすぐにこう書かれた用紙を受け取って、私も一参加者としてここにいなければと気が引き締まる思いになりました。私がツアーレポーターであることは、子どもたちには関係ありません。この空間に存在する大人の一人なのです。

そう頭では分かっていても、子どもたちの時間はスピーディ。瞬間で状況は変わります。
私はこのツアーの中盤、敷地の端の崖の近くで、それまで仲良く遊んでいたのに急につかみ合いを始めそうになった子どもたちを「ここでケンカしちゃダメよ!」とキツく止めてしまいました。ケンカになる前に、です。

その場は収まりましたが、その後、当事者だった男の子には「こっち来ちゃだめ!」と追い払われるようになってしまいました。追いかけっこを面白がるような感じではなく、本気の拒否です。

構い過ぎたのかな、でも正直危なかったし…と、最後まで引っかかっていたので、帰る前にあじめさんに相談してみました。

「それがシホさんの“フィーリングリミット”なんです。」

フィーリングリミットとは、安全への自分の判断基準、言い変えると、危険と感じる、怖いと思う限界点。それぞれのフィールド環境、そのフィールドでの経験値、救助の技術や体力、もちろん相手との信頼関係によっても変わってくるものです。
子どもたち1人ひとりが違うように、大人だってそれぞれ。その自分の不安や怖いという感覚を一旦認めた上で、子どもたちに「“私が”ここでつかみ合いをされると怖いから、やめてほしい」と正直に伝えれば良かったのかも、という視点に気づかせてもらいました。

ツアーに参加した親御さんも、生活圏とは違う所で思いっきり遊ぶ様子を、ただうれしく見守るだけではありません。「初めてのお友だちとの接し方に戸惑って心を揺らしているのが分かる」と言っていました。さらに、遊びなれない森の中で、切り株に登ったり、火の周りを歩いたり、不安が先立つ瞬間も次々出現します。きっと、思わず助けて抱きしめたくなったシーンもたくさんあったことでしょう。

日々子どもたちと向き合っているあじめさんでも、実際できていないことや裏目に出てしまったことなどを反省することばかりだと言います。

そうした意味では、大人もみんな手探り中なのかもしれません。私はこれから先、このツアーで感じ教わった「大人の在り方・場の作り方」をあらゆる場面で思い出すでしょうし、心がけのひとつにしていきたいなと強く感じました。

さて、そんなことを考えていたらあっという間に午後3時。5時間の親子体験ツアーはそろそろ終わりです。

おわりの会、「森のかみさま、ありがとう!」

「片付けできた~?絵本読むよ~」
あじめちゃんの掛け声に、自分のリュックや水筒をしっかり抱えた子どもたちが円を成して集まります。
終わりの会では絵本を読むのが恒例で、今日の題名は「ワニのダンス」。あじめちゃん独特の抑揚ある読み声に、淡路島キッズも体験の子たちもくぎづけでした。その後、今日やったことをなどを発表しあいます。

「今日一日、安全に楽しく過ごせたのは森の神様のおかげです。お礼を言いましょう!」『森の神様、ありがと〜ぅ!』子どもたちの元気な声が木立にすぅ〜っと吸い込まれていったのを合図に、「森のようちえん・まんまる」の親子体験ツアーは解散です。そして、あじめちゃんは参加者全員が帰って行くまで、保護者一人ひとりに声をかけ、今日一日のことを共有されていました。

「森のようちえんは、生き方」

これはあじめちゃんが好きだと言っていた言葉です。「子どもはすべて知っていて、私は教わることばかり。そんな師匠の近くにいたいんです」とも。今思うと、あじめちゃんは誰からも「先生」とは呼ばれていませんでした。

自分と仲間と自然を大切にする時間をあじめちゃんと一緒に過ごした子どもたちは、どんな風に育っていくのか。このレポートを書きながら、みんなにまた会いたくなりました。

上の写真にある子どもたちが輪になっているイラストは、落書きが特技のあじめちゃん作。笑ったり泣いたり助けたり発見したり…。今回の子どもたちの様子はこのまんまでした。
「森のようちえん まんまる」は事前予約制で1日預かりや親子参加も受け入れているので、ぜひ一度遊びに来てみてください。淡路島のでっかい自然と、森のようちえん・まんまる、そしてあじめちゃんの他にはない魅力を、た~っぷり感じられることと思います!

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森のようちえん まんまる
http://awaji-manmaru.com

淡路島マンモス
https://awajimammoth.com

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この暮らし体験のナビゲーターについて

ウエダシホ

お住まいのエリア:洲本市
職業、所属など:デザイン&コピー

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